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絶え間ない心マッサージをおこなうために~自動心マッサージ器その名は「LUCAS」!

 先日、当院への救急患者搬送も多いG消防のS救急救命士に新しい自動心マッサージ器(LUCAS心臓マッサージシステム。以下、LUCASとします。)の説明会を行って頂きました。

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 聞いた話では、この自動心マッサージ器を導入するのは、九州沖縄地区の消防では初めてなのだそうです。(「九州沖縄地区の消防で!」というところがミソのようです!(^^)/)

 今までも、いろんな心マッサージ器がありましたが、このLUCASの最も良いところは「軽い」ところだそうです。院内で使用するなら多少重くても耐えられますが、現場で使うには他の器材もありますので、軽くないと救急隊員が大変ですよね。

メーカーのホームページによると、利点は以下の通りです。

•ガイドラインに沿った胸骨圧迫
 圧迫深さ:4-5cm
 圧迫頻度:100回/分
 完全なリコイル

•本体重量約6.3kgと軽量

•X線透過
 本体上部とピストンロッド以外はX線を透過、透視下でも使用可能

•低ランニングコスト
 消耗品は動力源の圧縮空気だけ


 ご家族にとっては器械で患者さんの心臓マッサージをすることに抵抗もあるかもしれませんが、揺れる車内や狭い場所、あるいは、少ないスタッフで効果的な心マッサージを長く続けるにはこの器械の方が人間より明らかに優れていると思います。もちろん、使用前には、救急隊から装着に関する説明も行われます。

 また、このG消防では一度に3器購入したそうで、この4月から各出張署に1器ずつ配備され、心肺停止患者発生時には全ての患者さんに装着予定となっているそうです。

 今までも時々、自動心マッサージ器を使用する救急隊もありましたが、その救急隊は当院までの搬送時間が長いところでした。しかし、G消防では、病院までの搬送距離に関係なく心肺停止であればこの自動心マッサージ器を装着し、心マッサージ以外の処置(気道確保、静脈路確保など)に人員を当てる活動をおこなうようです。また、「ぜひ、病院内でも搬入後に使い続けてほしい。」というありがたい言葉もあり、そのため院内で説明会を開いて頂きました。病院としては、夜間の当直時間帯などは、心マッサージをおこなう人が不足しますので、本当にありがたいです。

 ちなみに、装着方法自体はそんなに難しくありません。心マッサージ中に、体の下に黄色い板(背板)を滑り込ませた後、上から圧迫する器械をカチッとはめ込むのみです。実際の訓練している動画も見せて頂きましたが、スムーズに装着されておりました!

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 この機器の導入が、すぐに救命率や社会復帰率の上昇につながるわけではないかもしれませんが、今以上に「救える命を必ず救うための体制作り」を推し進める上でのシンボル的な存在になりそうな気がしています。


注1:「心マッサージ」は正しくは「胸骨圧迫」です。わかりやすいように敢えて心マッサージとしました。
注2:外傷患者の心肺停止に関しては、自動心マッサージ器の使用はメーカーは推奨していないようです。
 
by nozakoji | 2010-03-29 23:17 | 救急の話

救急専門医、麻酔科認定医・標榜医。北から沖縄に移住→再び北上した感想など…。(救急には無関係な内容が多い!ペインクリニック患者でもあります。)症例は設定変更しています。

by nozakoji
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