2006年 09月 10日
黒色便=消化管出血???
さて、いつかの症例です。(夢の中の話かもしれません。)
ホットラインがなりました。
A医師 「あ~もしもし、AクリニックのAと言いますけど、先ほど便秘で腹痛があるということで来院した○○才の高齢女性に浣腸をかけたのですが、黒色便が出てきました。腹痛も続いています。消化管出血の可能性もあるので見てくれませんか?」
noza 「あ、わかりました。ちなみにその方は、抗血小板薬(いわゆる「血をサラサラにする作用」あり)とか、鉄剤の内服は無いのでしょうか?」
A医師 「え~、(カルテを見る音)、以前脳梗塞でかかったB病院から抗血小板薬、胃薬、降圧薬は出てますが、他は特にないと思いますよ。では、手紙書くのでよろしくお願いしますね。」
確か、週末の夕方の出来事でした。電話からは「丸投げ」っぽい雰囲気がにじみ出ておりました。(苦笑)
30分ぐらいして患者さんはご家族と共に来院しました。
患者さんである高齢者は、「なんでこんな遠くまで来なくちゃ行けないの。もう、疲れたから帰りたい・・・。」とかなり不満そうです。聞くと、腹痛も全く無いそうです。
腹痛は治まったと言っても、高齢者ですし、他院からの紹介ですからきちんと診察、問診をしました。(ま、当たり前ですが。)
で、紹介状の手紙も読んだのですが、読むと、 鉄剤は出てました・・・。問診を続けました。
noza 「今まで便が黒かったことは無いですか?」
と聞いたところ、
高齢者 「B先生のところの薬を飲んでからずっと黒いよ。今に始まった事じゃないよ。」
noza 「え、それはA先生に言わなかったんですか?」
高齢者 「だって、そんなこと聞かれてないよ。それよりまだ、帰れないのかい?」
A医師がきちんと問診さえしていたら「今日始まったわけでは無いので問題ないな。元気だし。」で済んで、こんな遠いところまで来なくて良かった患者さんでした。
貧血に対して鉄剤を飲んでいたら黒色便が出ていても全く不思議はありません。研修医はもちろん、医学生でも(たぶん)知っている知識です。
でも、念のため血液検査もしましたが、消化管出血しているような血液検査所見はありませんでしたので、 ご家族には
「おそらく薬の作用で便が黒いのが続いています、ただし、新たに消化管出血した可能性も考えてA先生はこちらを紹介してくれたんですが、それは今の時点では考えにくいと思います。まずは家に帰って様子をみましょう。週末に何かあったらいつでも来て下さい。」
とお話しして帰宅としました。
今回の症例、本当にあったかどうかは忘れてしまいましたが、もし事実なら「人の振り見て我がふり直せ」症例の一つだな~、と思います。でも、開業してしまうと早く患者を帰したい、と思う気持ちからこうなってしまうのかな~。
ま、私の場合、開業の可能性はほぼゼロ%ですけど・・・。(^_^;)