2007年 07月 04日
今週末に北海道メディカルラリーが開催されます!
さて、今まで何度も記事にしてきましたが、近年、救急医療の分野では
「こんな患者さんと出会った時にどういう対応すべきか?」
というシミュレーショントレーニングコースが盛んに開催されるようになりました。シミュレーションの対象は、外傷であったり、心肺停止であったり、災害であったり、その他の病態であったり様々です。でも、シミュレーションと言うことで、その再現性には「限界」があるわけです。
例えば、外傷のシミュレーション。
いくら、化粧道具や血糊を使って、出血や打撲痕を患者役の方の体に再現して、
「この患者さんはバイクの転倒事故の患者さんです。近くにはまだエンジンのかかったままのバイクがあり、ガソリンも漏れています!」
と設定を与えても、実際は部屋の中にバイクはありません。ガソリンが漏れていることもありません。つまり、実際の現場であり得る危険な状況は完全に再現できていないわけです。
そんな実際の現場と違う部分を何とか再現し、より緊迫した状況の中でトレーニングしようという「救急医療シミュレーションのお祭り」が「メディカルラリー」なわけです!
欧米では、参加チームが実際の救急車で指示された場所に向い、そこで崖から落ちそうな車の中にいる傷病者(役)に接触し、救助、救急処置を行うという形で以前から行われておりました。それが数年前に日本の各地(大阪、茨城など)で導入されて、今では全国各地で開催されるに至っています。また、その各地で行われているメディカルラリーの成績優秀チームが集まった全国大会も5月に行われたということは、yangt3先生のブログでも以前、紹介されていましたね。
以前、開催スタッフに加わった経験から言うと、出場チームに体験して頂く「設定、状況」を考えるのは非常に難しいです!
ただ単純に
「50才男性、同僚とケンカして意識障害です。では、現場に行ってください!」
として、実際の外傷も「頭部外傷」では、「お祭り」としては面白く無いわけです!なので、開催スタッフ側は一工夫(?)付け加えます。
患者さんの過去の病気について同僚に何度も問いかけると
「そういえば、おしっこに糖が出てるので病院に行ってるみてぇだな~。」
という「糖尿病」を疑うキーワードが与えられるわけです。また、持ち物のカバンの中には「お薬手帳」があって、それに気付けば、そこには糖尿病で出される「インスリン」という血糖を下げる注射が処方されているという記載もあるわけです。すると、優秀な隊員は
「意識障害の原因として、外傷だけでなく糖尿病による意識障害も考えなくては。病院にファーストコールを入れる時に情報として伝えよう。」
と考えるわけです。そして、その情報を病院に伝えたチームは採点が良くなるということです。
つまり、ちょっとした謎解きも加えられ、まるでTVゲームの「ロールプレイング・ゲーム」のようです。(笑)
あと、現場の状況設定で難しいのは、「傷病者役の方の演技・人選」でしょうか。
「野球少年が心肺停止」になったという設定があり、出場チームが救急隊として現場に駆け付けると、野球のユニホームを着たどう見ても40代の男性Yさんがいたそうです。
救急隊はその方を「監督か指導者」と考え、患者さんの情報を得ようとしたら、その「方」は
「え~ん、ボクの振ったバットが友達に当たっちゃったよ~」
ということを言いだし、その「子」も野球少年だった、というムリな設定もあったようです。(笑) まあ、お祭りですから、それはそれで笑えて良いですよね。
あと、多数傷病者発生の設定で、患者役の女性Sさんが設定通りの年齢を救急隊に告げたら、
「え、●●才?意識障害あるなあ~。」
と判断され、あとで怒っていたということもありました。(笑)
と、前置きが長くなりましたが、今週末に北海道でメディカルラリーが開催されるそうです。(これが書きたかった!(^_^)v)
その開催地である遠軽町のホームページの「おしらせ」には、
実行委員会ではこのメディカルラリーの重要性を広く皆様に知っていただくために、自由に見学をすることができるようにしております。ぜひ、この機会に見学に来てみませんか。多数の皆様のお越しを心よりお待ちしております。
と書いてあります。まあ、一般人の見学は少ないかもしれませんが、これを読んだ救急オタクの方や、まだメディカルラリーに出場したことも見たこともないという消防関係者・病院関係者の方は是非、訪れてみてはいかがでしょうか?(って、こんな直前情報じゃ日程的にムリですかね?(^_^;))
「第3回北海道メディカルラリー」が安全かつ盛大に開催されることを、遠く沖縄よりお祈りしております!(^^)/