2005年 11月 08日
20代の心肺停止・・・・。(後編)
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さて、私はまず何をしたのでしょうか???
A:静脈留置針による胸腔穿刺をおこなった!
B:「ふっ、胸に何かあるな。」と考え、胸部レントゲンを撮影した!
C:頚静脈が怒張しているのをいいことに、いとも簡単に外頸静脈から中心静脈カテーテルを留置して昇圧剤を投与した!
D:開胸心マッサージをおこなった!
E:天に祈った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 答えは救急専従の方には簡単かと思いますが・・・Aです!(Eも正解。心拍再開を天に祈っていたような気がしますので。(笑))
私は、緊張性気胸を疑い、静脈留置針を2本前胸部に穿刺しました。、「えい!」と穿刺をしたところ「プシュー!」と脱気があり、若干ですが換気状態は改善しました。心電図もPEA(無脈性電気活動。波形は出ているけど脈が触れない状態。)となりそのままACLSを続行したのですが、結局、自己心拍再開(ROSC)は得られませんでした・・・。
その後、胸部X線写真を撮りましたが、全く縦隔偏位の解除が得られていないため、胸腔ドレーンを留置しました。
(写真参照:右肺は完全に虚脱。よく見ると右前胸部に穿刺した針が見えます。左上肺野にはブラ(肺が破裂しやすい大きな風船になっている状態)があります。)
さらにACLSを続行するも、VF(心室細動)やPEAにはなってもすぐに心静止を繰り返し、ROSCには至ることなく、最終的に永眠されてしまいました・・・。(手伝ってくれた後輩の勧めでTCP(経皮的ペーシング)もしましたが、十分な効果はありませんでした。)
外傷症例では静脈留置針による胸腔穿刺の経験はありますが、「自然気胸からの緊張性気胸→CPA」では恥ずかしながら、初めてです。
以前、高齢者の蘇生を試み、永眠後に緊張性気胸だった症例があり、後悔した経験があったので今回はXP撮影前には施行できたのが唯一の納得できた点です。(でも、蘇生できなければ全く意味無いですよね。穿刺の位置も悪いし。)
あと、薬剤、処置に対するあまりの反応の悪さから考えると、CPAになってからは少し時間は経過していたのかな、と思われました。(体温が低下していました。)
緊張性気胸と心タンポナーデによる心停止(特にPEAの時)は、処置(心嚢穿刺、胸腔穿刺)が早ければ自己心拍の再開が望める代表的な病態です。
心停止の患者さんで緊張性気胸を疑ったときには、呑気に「レントゲンを見てから・・・。」というのは医師としてはやってはいけない行動です。もちろん、何の処置もせずに、緊張性気胸の写真が存在すること自体も恥ずべきことです。
この患者さんも、結果は変わらなかったかもしれませんが、「穿刺してすぐにドレーンを入れれば良かったな。」などと反省ばかりが頭に浮かんでしまう症例でした。
若い皆さんはこんな私を反面教師にして、「後悔しない心肺蘇生」をして下さいね。