雪道で転倒?頭部外傷の一例

 全国で雪による被害が出ていますね。当地は毎年嫌になるほど雪も降るので、例年通りの被害(?)です。

 さて、先日、こんな症例がありました。
 
 配達の仕事をしている方が、耳と鼻から血を流して倒れているのを見つけられ、当院救急外来に搬入されました。

 初療医の話では、来院時、意識はほぼ清明で、手足に麻痺もなく、頭にも明らかな外傷はなし。しかし、血圧が200以上あったため、降圧薬の注射剤を持続的に投与開始したとのこと。
 自分が救急外来に行ったときには鼻出血はほぼ止血していましたが、耳出血はまだ続いていました。
 初療医が「転んだのですか?」と聞くと、患者さんは「転んでいない!」と言い張っていたそうですが、その後、私が「今は夏ですか?冬ですか?」と聞くと「う~ん、わからない。いや、冬かな?」と明らかに意識障害が認められました。

 「これはまずい!」と、すぐに頭部CTを撮影に行ったのですが、そこで嘔吐し、さらに意識障害の悪化も認められました。その時の頭部CTが以下の写真です。

a0031617_2262726.jpg
 白い骨に囲まれた中に、脳(灰色の部分)が認められます。CTの左側に凸レンズ型の白い部位(出血部位)が認められます。

 CT上、外傷による急性硬膜外血腫を疑い、脳神経外科にコンサルトとなり、緊急手術(開頭血腫除去)となりました。

 外来搬入時、すでに本人の意識障害があったので、自己転倒か車にひかれたのかはハッキリしませんが、その日の路面状況などからはおそらく、前者かな、と思われます。

 
 頭部外傷において、鼻出血や耳出血は頭蓋底(脳の下面、耳や鼻に近い部分)の骨折を疑う重要なサインとなります。
 この方の場合も、明らかな頭部の外傷(皮下血腫、挫傷)がなくても、また、本人が「頭なんか打ってない!」と言い張っても、救急隊員や院内スタッフは「あ、頭蓋骨骨折あるかも。今は意識障害がたいしたことなくても、あとで急変するのでは?」と考えて救急搬送や院内初療にあたらなくてはいけません。(あ、重症な頭部外傷があるので、頸椎の損傷も考える必要がありますね。)

 
 あと、以前、自宅で縊頚(いわゆる首つり)した患者さんが搬送されたときに、なぜか耳から血が流れていたことがありました。
 
 「あれ、外傷じゃないのに・・・???」

 と不思議に思いながら脳CTを撮影すると、前頭部を中心に脳挫傷が認められました。

 不思議に思い、家族に発見時の状況を聞いたところ、旦那さんの縊頚しているのを見つけた奥さんがすぐにおろそうとロープをはずしたところ、患者さんは地面に落下し、頭を強く打ち付けたということでした・・・。(結局、低酸素のダメージより、脳挫傷のダメージの方が強く残ってしまうという結果になってしまいました。)
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by nozakoji | 2006-01-09 22:21 | 症例の話

救急専門医、麻酔科認定医・標榜医。北から沖縄に移住→再び北上した感想など…。(救急には無関係な内容が多い!ペインクリニック患者でもあります。)症例は設定変更しています。
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