背部痛の患者さんが来ました。

 朝方、呼ばれてかなり眠いnozakojiです・・・。こんな症例がありました。(注:実際の会話よりわかりやすく変更は加えています。ま、いつもですが・・・。)

 救急隊員:「60代の女性。昨日から背部痛があります。そちらでは骨粗鬆症で整形外科に受診歴があります。」
 
 nozakoji:「はい。」(この時点での心の声 「あ、きっと転んで背骨でも折れたのかな。」)
 
 救急隊員:「最高血圧が右上肢で158、左上肢で110台と左右差が認められます。」
 
 nozakoji:「えっ!」(心の声 「本物だ!!!」)


 突然の背部痛・胸痛の出現は救急領域では心疾患(心筋梗塞)や大動脈疾患を疑います。ただし、この方のように元々、腰痛などで整形外科を受診しているなどの情報があると、「どうせまた整形外科領域の病気だろう。」と、惑わされてしまうことがあります。(特に、最初に患者さんに接する立場の救急隊員や、私のようなインチキ医者!)
 
 今回の救急隊員の現場活動・観察で素晴らしいところは、

・きちんと血圧の左右差を確認したこと!
 大動脈に裂けめが入る(急性大動脈解離)と、腕に血液を供給する動脈の枝にまで影響を及ぼし、左右の血圧に差が生じることがあります。この症状を知ってはいても、病院へのファーストコールで、きちんと血圧の左右差まで報告する方は少ないのです。

・スクープストレッチャーで搬送したこと!
 上記ストレッチャーを使用したのは、なるべく患者さんに大きな刺激を与えないようにするための工夫でした。大動脈に裂け目が入った患者では、少しの刺激が病状を悪化させて、絶命にいたることがあります。(普通の担架で搬送し、「ヨイショ!」と病院のベッドに移動した直後に、重症化し死亡した症例も見たことがあります。 (T_T))

 来院後の診察では背部、胸部、心窩部(腹部)にも持続する強い痛みがあるため、「やはり、本物(の大動脈解離)だ!」と確信した私は塩酸モルヒネ(麻薬。鎮痛目的で使用。)を筋注後に、造影剤を用いた胸腹部CTに向かいました。 (以下の図)

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 診断は、やはり急性大動脈解離でした・・。で、ICU入室後、臨時手術(裂け目の入った血管を人工血管に置換する手術)が行われております。

 ベッドの中や、机の前でゆっくり考えれば浮かんでくる教科書的な知識がたくさんあっても、患者を前にすると、必要な観察や気の利いた処置ができていないことってよくあるんです。(これは、昔、初めてドクターカーで現場に行った時に、たいしたことが出来なかった私の経験からもお話ししています。 m(_ _)m) 今回の救急隊は、きちんと病状を考えて、観察・活動が出来ておりました。素晴らしい!!!


おまけ:手術室入室時の胸部レントゲン写真。縦隔陰影が拡大している。(臥位ですが。)
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おまけ②:半年前の胸部レントゲン写真。縦隔陰影は拡大していない。(立位ですが。)
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by nozakoji | 2006-01-12 21:10 | 症例の話

救急専門医、麻酔科認定医・標榜医。北から沖縄に移住→再び北上した感想など…。(救急には無関係な内容が多い!ペインクリニック患者でもあります。)症例は設定変更しています。
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