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屋根からの転落症例。JPTECからJATECへ!

 明日は平日ですが、仕事を休む予定です。といっても、サボるわけではなく、娘がS市の病院まで専門外来の定期受診に行くため、ついていきます。(ま、少しはサボって来るかもしれませんが。)(笑)
 
 さて、私の住む地域は雪国なので、毎年多くの方が屋根の雪下ろし中に転落して重傷患者として搬送されてきます。
 
 過去には、「命綱を付けていなかったために命を落とした人」はもちろんのこと、「命綱を正しくしていなかったため、命綱が体・頸部にからまり窒息状態になって搬送された」という方も経験しました・・・。

 
 いつか忘れましたが、こんな患者さんが運ばれて来ました。

 除雪作業中に屋根から転落して、背部痛を訴えている患者さんでした。搬送してきたのは、公私ともにお世話になっているKi救命士とKu救命士。きちんと救急隊員向け外傷初療プログラムであるJPTEC(じぇいぴーてっく)に乗っ取った観察、評価をして全脊柱固定で搬送してきました。
 救急隊員がしっかり現場で観察してきたからには、病院側の人間もそれに答えなくてはいけません!医師向けの外傷初期診療ガイドラインJATEC(じぇいえーてっく)に乗っ取った診療を開始しました。
 
 まず、気道(A:Airway)の観察。→声も出る。開通OK!
 次に、呼吸(Breathing)の観察。→明らかな胸郭の変形はなし。呼吸音に明らかな左右差なし。左背部に圧痛あり。皮下気腫なし。
 次に、循環(Circulation)の観察。→血圧などは安定。出血性ショックの徴候はなし。しかし、もしもに備え、なるべく太い静脈留置針で点滴ルートを確保。そして、超音波検査で、明らかな出血源が無いか、心→右胸腔→肝臓周囲→左胸腔→脾臓周囲→膀胱周囲の順番で観察しましたが、明らかなものはなさそう。

 ここまでで、命に関係するABCについては、まずは一安心です!さらに、意識障害もありませんし、全身を観察しても骨盤骨折や大腿部の骨折もないようです。

 全身状態は安定してるので、造影CTを撮影しに行きました。(血圧などが安定していない状態でCTに行くことは危険なんです。CT中に心停止になる可能性がありますからね。CTは「死のトンネル」です!)

 で、結局、CT、レントゲン上は「肺挫傷、肋骨骨折、鎖骨骨折」と、まあ、すぐに命に関わる重傷な外傷はありませんでした!さらに、一安心!
 
屋根からの転落症例。JPTECからJATECへ!_a0031617_22533195.jpg


 
 最近の救急隊員の方からの外傷初療に関する不満(?)の一つは、

 「救急隊員が休みをけずって、外傷初療プログラムJPTECを受講し、患者さんの救命に一生懸命になっても、医師向けの外傷初期診療ガイドラインJATECの普及が進んでいない!」
というところにあります。(私の住む地域では。)

 JATECはまだ開催コースが少ないので、比較的外傷患者を見る機会が多い医師しか受講できていないという事実があります。本来なら、普段外傷患者を滅多に見ない医師(例えば内科医や地方の診療所に勤務する医師)にもっと積極的に受けてもらうべきなのです。でも、コース受講要件が厳しかったり、前述のように開催コースが少なかったりで普及していなかったのです。
 でも、そんなJATECに変化が出ました!ホームページも変わり、受講条件(申し込み方法)も少し変わりました。これを機にコース開催も増えて、私の住む地域でも病院側に外傷診療の標準化が進むことを祈る次第です。

 てな訳で、私も地元へのJATEC普及のお手伝いをしようと、4月のJATECインストラクターコースに応募してみました。(採用されるかわかりませんが・・・。)
by nozakoji | 2006-02-23 23:09 | 症例の話

救急専門医、麻酔科認定医・標榜医。北から沖縄に移住→再び北上した感想など…。(救急には無関係な内容が多い!ペインクリニック患者でもあります。)症例は設定変更しています。

by nozakoji
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